TS−600
TRIO初の6mオールモード機として今でも人気があり,十分実用になるリグです。
中身が詰まっているだけに故障個所も多く,特にTS−700系で共通する不具合が
VFOのガリで,ダイヤルを回すとFIX.CHが点滅したり,SSB受信時にトーンが不連
続に変化したりします。生産時期によって若干回路が異なり,シリアルが72xxxx
以降はFMセンターメーター用のアンプ基板が追加されています。
不具合現象頻度原因修理内容
ACで電源が入らない1件 電源ユニットのブリッジダイオードのオープン。同じものがないので,新
電元のS4VB60に交換(本当は6A〜10A定格のものが望ましい)。
VFOの発振が不安定
(FIX.CHランプが点滅する)
大半 VFOバリコンのGNDリーフばねの接触不良で起き,TS-700系の大半で
この傾向があります。ダイヤルを4・5回往復させることで良くなる場合も
あり,またVFOシールドケースの右側面の調整窓からピンセットなどで
リーフばねをしごいたり,接点復活剤を吹くと直るには直りますが,一時
的な回復なのか長期的に有効なのかは不明です。
尚,TS-700とはバリコンの羽根の動き(回転方向に対する羽根の出入
り方向)が逆になっているのでVFOユニットの互換性はありません。
不連続なQRHがある
VFOのリニアリティが悪い2件 100KHzずつ校正していくと,最大5KHzほど目盛りずれしています。
バリコンのF直調整が必要と思われるので,とりあえずそのまま。
受信感度がものすごく悪く,AM,
SSB,CWでパワーが出ない
1件 10.7MHzのIFTの同調コンデンサ不良。GEN UNITのT2,RX・NB UNIT
のT4,T7,T8がすべてダメになっていました。基板裏に22PFを抱かせ
て同調を取り直しOK。
AM,SSB,CWでパワーが出ない1件 GEN UNITのIFT T1の同調コンデンサ不良。基板裏に22PFを抱かせ
て同調を取り直しOK。TS-120系の8.83MHzのIFTでも時折起きます。
パワー微弱,受信感度極悪1件 POWER SUPPLY UNITのR9にケミコンが付いていたため-6Vが出てい
なかった。なぜケミコンが付いていたのかは謎。
R-DX ONで感度下がる2件RX BOOSTER UNITのQ1(2SC1117)の不良。交換。
全般的に受信感度が10dB悪い1件原因不明。FMではR-DXを入れればなんとかなるがAMでは顕著。
AM,FMで感度が悪い2件IF UNITの局発Q7劣化。2SC460交換。
AMで感度が悪い
または受信音小さい
多数 IF UNITの検波増幅Q6劣化。Q1からQ6まで2SC460全て交換。
T1,T2再調整(Sメーターは変わらないので,受信音最大にする)。
AM,FMの無信号ノイズは出る
が受信音が出ない
2件 IF UNITの局発水晶不良。11.155MHzの水晶が入手できなかったので
10.245MHzに交換。
AM受信時にガサガサノイズ1件IF UNITのQ3不良。
FM,AMで受信音出ない2件 IF UNITの局発が発振していなかった。Q7交換で受信できるようにはな
ったが,かなり感度が悪いのでQ1からQ11まで全て交換。
FMの無信号ノイズが小さい多数 IF UNITのリミッタQ8〜Q11の劣化。2SC460交換でOK。Q8〜Q11は
ゲイン低下していることが多く,Q11-Q10-Q9-Q8の順に交換していく
とどこかで良くなりますが,できれば4個とも交換してしまいましょう。
注:この不具合が起きると,必ずスケルチ不良も発生します。
USB,CWの送受信ができない1件 CAR UNITの10.7015MHz水晶不良。ジャンク機から外して交換。
注:TS-700とはヘテロダインが逆のため,USB/LSBのキャリア周波数
もTS-700と逆になっています。
USBとLSBでノイズ音調が違う3件 キャリアポイントずれ。と言うよりも,経年変化でSSBフィルタの特性が
変わってしまったようです。フィルタの特性にキャリアポイントを合わせて
やれば一応OKなのですが。。。いろいろ副作用も出ます。
LSBで送受信できない1件BANDスイッチ接触不良が原因。接点復活剤で処置。
全く送受信できない2件BANDスイッチ接触不良が原因。接点復活剤で処置。
受信音が出ない2件スピーカーの断線。
AMで受信音が出ない1件MODEスイッチの接触不良。接点復活剤で処置。
DRIVEが左回し切りで感度が
ピークになる
数件 RXBの+9Vズレ,POWER SUPLLY UNITのVR2再調整。
DRIVEを中央にして51.5MHzで送信のピークになるようにVR2を調整し,
そこで受信感度がピークになるようにRX・NB UNITのT1〜T3を調整する
と送受信のピークが合います。これを調整した後は必ずVR1で12Vの調
整も行います。
パワーが出ない(受信はOK)1件 BAND SW基板のD6が不良で,送信時にVCVがかかっていなかった。
汎用ゲルマダイオードですが交換はけっこう大変です。
パワーが出ない(受信はOK)1件MIX UNITのSN76514N不良。
送信にならない
リアパネルのMTプラグがささっていなかっただけ。
送信にならない
または,時々送信にならない
半数 CALスイッチの接点不良。何回かカチャカチャやっていると良くなる場合
もあります。接点に1Aくらいの電流を流しながらやると効果的ですが,
流し過ぎると接点が溶接してしまうので要注意。
2回路2接点のスイッチの,使っていない側に配線変更して直す方法も
あります。スイッチをパスさせてCALを完全に殺し,ともかく送信できるよ
うにしてしまう最終手段もあります。
CALにならない
または,時々CALにならない
CAL OFFしてもマーカー信号が
弱く受信できる
1件MKR UNITのQ1不良。2SA562交換。
AMのパワーが少ない4件 AM CAR半固定調整ずれ。VR16再調整(前期のものは回路図にもあり
ませんが,ラグ板にこの半固定が付いています)。
ただし根本原因はどこかの段のゲイン低下だと思われます。
1件AM CARボリウムに10k/3.3kの分圧抵抗が付けられていた?
1件 AMのキャリアポイントずれ。CAR UNITのTC3再調整(経年変化でSSB
フィルタの特性が変わり,スロープ部分にキャリアがきていたらしい)。
パワーが3Wまでしか下がらない1件MIX UNITの半固定VR2のスライダー欠落していたため交換。
パワーが2Wまでしか下がらない1件MIX UNITの半固定VR2の調整ずれ。
パワー調整が不連続に変わる3件RF POWERボリウムのガリ。接点復活剤でOK。
電流は喰うがパワーが出ない1件 FINAl UNITのT5の半田不良。半田付けを一カ所直すのにFINAL UNIT,
MIX UNIT,LPF UNITを外さなければならずけっこう大変です。
20W以上出る!1件MIX UNITの半固定VR1の調整ずれ。
フルパワーでランプが暗くなる1件 パワーが10W弱しか出ていないのに消費電流が妙に多い。ファイナル
周辺の異常?原因不明。
SSBの無変調送信で約2Aも食う1件 ファイナルのアイドリング過多か??どこかがものすごく熱くなっている
はずだが。。。原因不明。
時々感度が低下する2件同軸リレーの接触不良らしく,代替品がないのでそのまま。
FMの送信周波数ズレ数件GEN UNITのL4の再調整。GEN出力が10.7MHzになるように調整します。
FMセンターメータ振れない1件MODEスイッチの接触不良。接点復活剤で処置。
FMセンターメータ振れ不安定2件 CENスイッチ接触不良のため,CENとSを切り替えるたびに指示値が変
わります。何回か切り替えているとたいてい良くなります。
FMセンターメータずれ半数 RX・NB UNITの半固定調整ずれ。VR4,VR1再調整。この時,必ずSメ
ータのスタート点調整のVR4を先に行っておきます。
数件 後期バージョンのみ:センターメータユニットの半固定調整ずれ。VR1再
調整。これも,Sメータのスタート点調整を先に行っておきます。
Sメータが振り切っている1件 RF GAIN/AF GAINボリウムの端子が,隣のDRIVEボリウムのケースに
触れていた。
Sメータが不規則に振れる1件RX・NB UNITのQ5不良。Q4も同時に交換。
Sメータが振れない1件RX・NB UNITのVR4ガリ。
Sメータが振れたまま1件RX・NB UNITのQ5不良。2SA495がないので2SA1015に交換。
FIX.CHランプ点いたまま1件 HET UNITのスイッチングQ8がオープンになっていたため,前オーナー
がランプの配線を変えていた。2SC2001に交換。
FIX.CHランプ点かない数件 球切れ交換。ボリウムのナットを全てはずしてフリーにしておくとピン
セットが入ります。
1件HET UNITのスイッチングQ8不良。2SC735交換。
VFOの高いほう,または低いほう
でFIX.CHランプが暗くなる
数件 HET UNITのQ6不良(ゲイン低下)。2SC460交換。半田面側のシールド
板を外す必要があります。
ダイヤル照明点かない1件球が外されていた。
1件球切れ交換。
RITランプ点かない1件球切れらしいがそのまま。
BANDランプ点かない数件球切れ交換(FIX.CHよりたいへん)。
全てのランプ点かない3件球切れ交換(かなりたいへん)。
Sメーター照明点かない2件球切れ交換。
Sメーター目盛り板ゆがみ1件 メーター照明が定格以上のランプに交換されていたため,熱で溶けて
ゆがんだらしい。代替品がないのでそのまま。
スケルチがきかない
またはききが甘い
数件 IF UNITのノイズアンプQ12,Q13ゲイン低下。2SC733交換。
注:リミッタ段のゲイン低下でも起きるので,Q12,Q13を交換して直ら
ない場合や,最初から無信号ノイズが小さい場合はQ11-Q10-Q9-Q8
の順に交換していくと直ります。
正常なものは時計の10〜11時の位置でスケルチが閉じます。
数件 同じくQ14ゲイン低下。ロットによっては2SC458が入っており,2SC460
同様劣化が起きます。Q12〜Q14は2SC1815GRで問題ありません。
バンド毎にFずれ1件 HET UNITのT4調整ずれ。バンド毎のFずれはT1〜T4の調整で合わせ
ることができます。コア位置によってはとんでもない周波数で発振する
ことがあるので注意。
53M台で感度悪い1件 DRIVE調整用の半固定調整ずれ。BANDスイッチの裏側に付いている
VR15再調整(静かにやらないとスライダーがポロッといく)。
53M台でパワー少ない1件 DRIVE調整用の半固定のスライダー欠落。BANDスイッチの裏側に付い
ているVR12交換(コテが入らないのでけっこうたいへん)。ALCが効か
ないようにAMで調整するとピークがよくわかります。
RITセンターずれ半数 HET UNITの半固定調整ずれ。VR1再調整(RIT ONのセンターに合うよ
うにRIT OFFで調整します)。
バックラッシュがひどい1件 ダブルギアのばねが欠落していたのが原因。ばねの再取り付けはか
なりたいへんです。